
ドルの軟調と日銀の沈黙がトレンドを形成
マーケットセンチメント概観
5月最終週に入り、米ドルは対主要通貨で続落し、1カ月ぶりの安値圏まで下落しています。背景には、トランプ前大統領がEUからの輸入品に対する50%の関税導入を7月9日まで延期すると発表したことがあります。この一時的な緊張緩和は、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長との協議を経たもので、ドルの短期需要を大きく減退させました。これにより、アジア時間ではドルインデックスが0.3%下落し、2024年に積み上げた上昇分をほぼ帳消しにする展開となっています。
加えて、トランプ前大統領が掲げる恒久的な減税政策による財政赤字の拡大懸念(今後10年間で3.8兆ドルの債務増が見込まれる)も、米ドルに対する下押し要因となっています。
一方、日本円は堅調な推移を見せており、地政学的リスクや通商問題への懸念が根強い中で、安全資産としての需要が引き続き支えとなっています。報道によれば、日本の通商担当官が6月上旬にワシントンで第4回協議を行う予定とされており、これが円の支援材料となりました。週末のドル円は小幅に下落し、その弱気の流れは週明けも続いています。
テクニカル分析 – USD/JPY(4時間足)
ドル円は明確な下落トレンドを継続しており、現在は142.72円付近で推移。5月初旬から続く下降トレンドラインに上値を抑えられています。足元では**小規模なブル・フラッグ(上昇フラッグ)**を形成していますが、144.00円手前での戻り売り圧力が強く、反発は限定的となっています。
主なレジスタンス:
- 143.07円 – ボリンジャーバンド中央線および直近の戻り高値
- 144.32円 – 5月初旬高値および下降トレンドラインの重なる水準
主なサポート:
- 142.22円 – 直近のスイング安値およびボリンジャーバンド下限
- 下抜けた場合、次の目標は141.60円、さらに心理的節目の140.80円が視野に
インディケーター動向分析:
- RSI(14)はは33.23付近と、売られ過ぎ水準に接近しており、弱気モメンタムが継続していることを示唆しています。
- MACDはゼロライン下で横ばい推移しており、買い手の勢いが乏しい状況を反映しています。
ボリンジャーバンドは下方向に拡大しており、さらなるボラティリティ上昇の可能性を示しています。
ファンダメンタルズの材料やFRBのタカ派的なスタンスによる明確なドル反転が見られない限り、テクニカル面では下落トレンドの継続が優勢と見られます。

ファンダメンタルズ見通し
今週注目される主要経済イベントは以下の通りです:
<米国(USD)>
- 5月27日:CB消費者信頼感指数
- 5月29日:四半期GDP(改定値)、コアPCE価格指数、新規失業保険申請件数
- 5月31日:コアPCE価格指数(前年比・前月比)、個人所得・個人支出
<日本(JPY)>
- 5月30日:東京都区部コアCPI(前年比)
- 5月31日:鉱工業生産(速報)、失業率
米国市場が祝日で債券市場が休場となる中、今週の注目はインフレ指標(PCE)とGDP速報値に移行します。
これらが市場予想を下回るようであれば、2025年後半にかけたFRBの利下げ観測が一段と強まり、ドル需要の低下につながる可能性があります。
一方、日本側では、東京都区部のCPIが注目されており、日銀の政策スタンスを見極める材料となる可能性があります。ただし、最近の日銀会合では市場への影響は限定的でした。
結論
ドル円(USD/JPY)は、テクニカル的にも依然として脆弱な地合いが続いており、米国のファンダメンタルズの弱さや通商不透明感が重しとなっています。
142.22円を明確に下抜けると、141.00円台までの調整が視野に入る可能性があり、特に米国指標が市場予想を下回る場合は要警戒です。
今週は、米コアPCEと東京都区部CPIの発表がボラティリティの主な材料となる見通しです。
短期的には143.50円を下回る限り弱気バイアスが継続し、ドルの安全資産需要が後退している中では、相対的に円が優位な状況が続くと見られます。